ORIGINAL UNIFORM 
PROJECT

「人」が主役となるフジテックブランドを体現するユニホームへ

エレベータ・エスカレータの専業メーカーであるフジテックでは、従業員の価値観の多様化への対応・働くモチベーション向上を目的に、ユニホームを一新。2024年10月1日より国内勤務の従業員約3,500名が着用を開始します。
コンセプト設計・監修は、株式会社セイタロウデザインさま。デザイン・制作はオンワードコーポレートデザインさまが担当しました。

『「人」が主役となるブランド』への進化を目指すフジテックの一大プロジェクトとして、その背景やプロセス、細部へのこだわりについてご紹介します。

BACKGROUND一人ひとりがより働きやすく、
個性を発揮できるように

フジテックには、研究・開発、販売、生産、据付、メンテナンス、リニューアルまで、幅広い職種の従業員が在籍しています。これまで職種ごとの労働環境や性別に応じて、異なるデザインのユニホームを運用してきましたが、安全衛生基準の厳格化や気候変動などを背景に、近年は従業員からも新しいユニホームへの期待が高まっていました。

また、女性従業員やベテラン技術者など、多様な人材の活躍を踏まえ、働き方・価値観のさらなるアップデートを図るべく、ユニホームのリニューアルを計画。大きな方針としては、職種ごとに異なっていたデザインを全職種統一のデザインに変更。従業員一人ひとりが個性を生かして活躍できるユニホームにするという目標を掲げ、2021年9月にプロジェクトを立ち上げ、3社合同で準備を進めてきました。

現在のユニホーム

CONCEPTGRADATION DIVERSITY
−グラデーションの多様性−

『「人」が主役となるブランド』への進化を体現するユニホームとして、コンセプトを『GRADATION DIVERSITY』と設計。企業、従業員双方の意思を反映したユニホームとなるよう、従業員と意見交換する全国キャラバンを行うなど、プロジェクトデザインから一貫して同コンセプトを実践しています。

コンセプトは、従業員にユニホームについて直接ヒアリングして回る全国キャラバンを踏まえ、株式会社セイタロウデザイン代表取締役 クリエイティブディレクターの山崎晴太郎氏が設計しました。

一般的にユニホームというのは「学ラン、セーラー服を着てください」といった、画一化されたものが概念の頂点にあると思うのですが、それだとさまざまな課題を解けず、全員が笑顔になる絵が浮かびませんでした。

画一的なものではなく、それぞれが「働きやすいな」「好きだな」と感じるものを立ち上げて、それを1つにまとめていくことがフジテックさんには合うと考え、「個性」「多様性」というキーワードを設定しました。(山崎氏)

クリエイティブディレクター 山崎晴太郎氏

そして、コンセプト『GRADATION DIVERSITY』に込めた思いをこう語ります。

個々人の個性や多様性というグラデーションの中で統一感を作る。何を選んだとしても統一感が出てしまうというのが理想だと思います。無理にそろえさせるというのは時代にもフジテックさんにも合わない。みんながポジティブに選んでいき、その結果が全部「フジテックらしさ」になるように要素を決めていきました。

こうして設計したコンセプトに基づき、組み合わせや着こなし方により従業員個人の個性を表現できるアイテムラインアップを検討。その上で、外部から見ると統一感があり、フジテックのブランドイメージを訴求できるユニホームにするという方針が決定。同時に、ワーキングユニホームにおいて欠かせない安全性、機能性の担保を追求しました。

コンセプト設計・デザイン監修

株式会社セイタロウデザイン 
代表取締役 山崎晴太郎氏

株式会社セイタロウデザイン代表、クリエイティブディレクター。株式会社JMC(東証グロース)取締役兼CDO。株式会社プラゴCDO。ブランディングを中心に、グラフィック、WEB・空間・プロダクトなどのアートディレクションを手がける。「社会はデザインで変えることができる」という信念のもと、各省庁や企業と連携し、様々な社会問題をデザインの力で解決している。グッドデザイン賞金賞や日経MJ 広告賞 最優秀賞など、国内外の受賞歴多数。各デザインコンペ審査委員や省庁有識者委員を歴任。2018年より国外を中心に現代アーティストとしての活動を開始。TBS「情報7days ニュースキャスター」、日本テレビ「真相報道 バンキシャ!」にコメンテーターとして出演。主なプロジェクトに、東京2020 オリンピック・パラリンピック表彰式、旧奈良監獄利活用基本構想、JR西日本、Starbucks Coffee Japan、広瀬香美、代官山ASOなど。

FEATURE 1DESIGN着こなしに余白のあるデザイン

  • アウタースタイル

  • ブルゾンスタイル

  • シャツスタイル

  • ベストスタイル

新ユニホームは、多様性を重視し、従業員一人ひとりの好み・嗜好性を重視し、ジェンダーフリーにデザインした6点のアイテムを用意。全アイテム共通のサイズ構成にしながらも、男女どちらにも合うシルエットを実現し、誰もが快適に作業を行えるオリジナルパターンを採用しました。デザイン面でも、表に見えるステッチの量を減らすなど、作業着特有の要素をなくし、洗練された印象に仕上げています。

また、決まった組み合わせを会社が指定するのではなく、それぞれが自由に選び、着こなすことができるのが特徴です。

さらにリニューアルを機に、安全上の理由で必要な場合を除き、ユニホームの着用を選択制としました。ユニホームを着るかどうか、どのアイテムを着るかも含めて、従業員一人ひとりの選択を尊重するスタイルです。

FEATURE 2CARAVAN全国600人を超える
従業員の声をヒアリング

2023年5月に名古屋で実施したキャラバンの様子

ユニホームリニューアルにあたり、2021年9月にプロジェクトを立ち上げ、準備を進めてきました。その過程で、従業員がサンプルを試着してプロジェクトメンバーと意見交換する全国キャラバンを実施。約4カ月かけて21のオフィスに足を運び、600人を超える幅広い職種・年齢の従業員の声をヒアリングしました。

デザイン面では、従業員から「色々な着こなしをしたい」という声があり、裾を絞れる方式に。シルエットのバリエーションが出ることで、個性を出して着用できるようにしています。同時に、足首に脚半を巻く職種については機能面でも適した形に仕上がりました。

また、業務を行う上でポケットの数が多いこと、フルハーネス装着時のポケットへのアクセス性、ハーネスを通す穴をベストに設けるなど、従業員の意見を取り入れることで、作業時を想定したブラッシュアップにつながりました。その他にも、ユニホームの引っかかりによる事故防止のため、マチを内側に入れるなど、安全面を考慮した細やかな調整も行っています。

その結果、デザイン性を保ちながら、エレベータ・エスカレータの据付や保守といった独特な労働環境においても、安全性・利便性・耐久性・快適性を確保した当社オリジナルのユニホームが完成しました。

  • パンツ アジャスター

  • ベスト ハーネス取付部

  • パンツ マチなしポケット

  • アウター ポケット

  • ベスト ポケット

  • パンツ 膝部分のダーツ構造

FEATURE 3MATERIAL業務から導いた素材へのこだわり

  • ストレッチ性の高いパンツ素材

  • シャツ素材

  • パンツ素材

新ユニホームは、ハードな作業環境を想定し、素材面でもこだわり抜いています。業務上、立ち座りや腕の上げ下ろしなど、特定の動きを繰り返すことが多いため、素材の配合はストレッチ性を重視したものに。同時に、夏場の通気性・速乾性を求める声がキャラバンで多く上がり、仕事のしやすさを重視した素材を採用しました。

ブルゾン・ベスト・パンツ素材は、ポリエステル90%綿10%で、肌側に綿素材がくる二重織構造を採用。ポリエステル(耐久性・ストレッチ性)と綿(着心地)の良いところを組み合わせ、仕立て映えする素材となっています。
シャツ素材も同様の配合で、耐久性と通気性のバランスをとり、軽ストレッチ性も取り入れた丈夫で軽い素材に。防寒着はポリエステル100%で軽量かつ耐久性に優れた防風性のある高密度素材にするなど、アイテムごとに細やかに素材を選定しています。(オンワードコーポレートデザインさま)

こうして吟味した素材について、社内の満足度は高く、中でもパンツに関しては膝まわりのストレッチ性が従来より飛躍的に改善。作業時の効率性が大きく向上しました。また、以前はストレッチ性の低さから大きいサイズを着用するケースもありましたが、ジャストサイズで着られるようになったため、デザイン面も改善。キャラバンで回ったどの拠点でも好評でした。

さらにカラーと素材の組み合わせにもこだわり、油汚れが目立ちにくく、洗濯しても色落ちしにくいユニホームに。長期間着用してもデザイン性を長く保つことが可能です。

FEATURE 4SUSTAINABLEサステナブルな運用

体型の異なる男女が、同一パターンのユニホームを着用するジェンダーフリーの設計・サイズ展開にしたことにより、ユニホームのラインアップを最小限に集約。従来の34アイテム・計259点から6アイテム・計48点へと大幅にスリム化したことで、過剰生産や余分な在庫を持つ必要がなくなり、無駄な製品廃棄を減らす運用につなげました。

また、現行のユニホームと新ユニホームは、それぞれリサイクルシステムを導入し、よりサステナブルな運用につなげていく予定です。

個性と多様性を尊重し
街でも誇りを持って歩ける
デザインに

新ユニホームは、デザインして完成ではなく、一人ひとりの従業員が着用し活用する中でブランドの一部になっていきます。今後は、マタニティデザインのラインアップの追加など、働き方の多様化に対応したアップデートも予定しており、従業員一人ひとりがより活躍できる環境を、新ユニホームからもバックアップしてまいります。

フジテックは、これからも『「人」が主役となるブランド』への進化を追求しつづけます。