エレベータの安全確保については、従前から建築基準法令および国土交通省の通達等に基づき、昇降機業界を挙げて取り組んでいるところですが、先ごろ、消費者安全調査委員会から、平成18年6月に東京都港区内で発生したエレベータ死亡事故に係る「事故等原因調査報告書」(注1)が公表され、また、これを受けて、2016年9月1日に国土交通省から、エレベータのさらなる安全確保に向けた取り組みを推進するため、関係先に通達(注2)が発出されました。
エレベータの安全性を確保するためには、所有者・管理者の皆様および製造業者、保守点検業者が、それぞれに求められた役割を認識し、適切に果たしていくことが必要です。
つきましては、上記調査報告書および通達において、所有者・管理者の皆様の役割として示された事柄について、次のとおりお知らせいたしますので、安全確保に向けた取組みになお一層のご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
注1 「消費者安全法第24条第3項に基づく事故等原因調査報告書 平成18年6月3日に東京都内で発生したエレベーター事故」(平成28年8月30日)
注2 「エレベーターの安全確保の徹底について」(平成28年9月1日国住指第1933号)
既設のエレベーターへの戸開走行保護装置の設置は、エレベーターの安全性を確保するために、所有者・管理者が責任を持って対処すべきものである。
所有者・管理者は、適切な保守点検業者を選定し、かつ、適切な保守点検業務が遂行されるよう、保守点検マニュアルや不具合に関する情報を取得・保存し、これらの保守点検業者への伝達を確実に行うべきである。
エレベーターの保守管理における所有者・管理者の役割について、所有者・管理者自身が自らの義務であるという認識を持ち、エレベーターの安全性の確保に主体的に関わる必要がある。
上記1~3は、「事故等原因調査報告書」において示された「再発防止策」のうち「所有者・管理者への働き掛け」として掲げられた3項目およびこれに関連して「通達」において示された事項を抜粋のうえ、要約して併記したものです。
2006年6月に東京都港区内で発生したエレベーター死亡事故を受けて、2011年8月に取り纏められた「既設エレベーターの安全性確保に向けて 報告書」において、『既設エレベーターに対する戸開走行保護装置の設置を強力に促進する』との方針が打ち出されています。
また、東日本大震災において地震・停電などによるエレベーターの長時間閉じ込めが多発したことを受け、『地震時管制運転装置を設置するなどの既存不適格(注)の解消を併せて行うことで安全性向上に総合的な効果がある』との見解も併せて示されました。
既設エレベーターの安全性向上に向けた取り組みが国・行政を挙げて進められているところです。
(注) 既存不適格:設置時点の法令には準拠しているが、現行法令には適合していない状態を指します。現行法令(2009年9月28日施行 改正建築基準法施行令)においては、
が定められていますが、現行法令が施行される以前に設置のエレベーターについては、これらが対策されていません。
このような社会情勢を背景に、当社は社会的使命として、戸開走行保護装置をはじめとする安全装置の設置促進活動を展開いたしております。
当社では、これらを低価格・短工期でご提供する「安全向上パッケージ」につきまして、以下にてご案内しております。
安全向上パッケージ国土交通省は、「戸開走行保護装置」および「P波感知型地震時管制運転装置」が設置済みであることを示す安全マークをエレベーターのかご内の見やすい場所に表示する任意の制度を2012年4月に創設しています。
所有者・管理者の皆様におかれましては、本制度の趣旨をご理解いただき、かご内に安全マ―ク・ステッカーを貼り付けることについてご承諾いただきたくお願い申し上げます。
以下に、一般社団法人建築性能基準推進協会による安全マーク・ステッカーに関するご案内を紹介いたします。
エレベーターの地震その他の震動に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件
地震その他の震動によってエレベーターの釣合おもりが脱落するおそれがない構造方法を定める件
地震時の強度を確認し、必要に応じてレール支持間隔の短縮やレールのサイズアップなどを実施する
地震時の釣合おもり枠の強度および変形量を確認し、必要に応じて釣合おもり枠の部材変更などを実施する
地震その他の震動によってエスカレーターが脱落するおそれがない構造方法を定める件
かかり代確保のため、延長プレートを追加する
建築物とトラスとの間に十分なすき間を設ける
2011年3月の東日本大震災により、エレベータの釣合おもりの脱落やレールの変形、エスカレータの脱落といった事象が複数確認されました。国土交通省はこの事態を重く受け止め、今後同レベルの地震やその他の震動が発生した際の安全性を確保するため、従来の建築基準法施行令の改正を決定。2013年7月に「建築基準法施行令の一部を改正する政令」が公布され、2014年4月1日に施行されました。
既設のエレベータ・エスカレータについては、新法の遡及対応義務はなく、必ずしも対応する必要はありませんが、「既存不適格」(設置当時は合法だったものの、最新の法に照らすと要件を満たしていないという意味)と見なされることとなります。しかし、違法となるものではありませんので、引き続き使用いただくことができます。なお、既設エレベータの新法準拠につきましては、当社商品「安全向上パッケージ」にて対応可能です。詳しくは、当社担当者までお問い合わせください。(注)
注 : 一部仕様で完全に新法準拠が困難な場合があります。
この内容は、2014年6月時点の情報をもとに構成しています。
建築基準法施行令の一部を改正する政令の詳細は、国土交通省の告示にて示されています。